経営計画(事業計画)は必要なのか? 絵に描いた餅ではないのか?

経営計画を立てる、という事がこれまで私自身として大嫌いでした。

未来のことなどわからないのに、何を言っているのか、それよりも目の前の仕事に愚直にまい進するべきだと考えていました。

特にベンチャー企業の売上増加率30%の事業計画などを見ると、嫌悪感・吐き気を催したものです。

ところが、開業して6-7年目頃でしょうか。

次第に確信が持ててきたのです。うちの事務所の顧客数・売上高は減ったことが一度もない。

もちろん解約・クレームはあるし、そこから反省しなくてはなりません、顧問先の廃業も何十件ありましたが、ト-タルでは売上高は顕著に増加している。

そして、顧客数・仕事量が増えてから人員確保に動いたのでは、間に合わないという局面を何度も感じるようになりました。

 

この段階になると、社内の仕事にすべて一度自分の目を通すことは不可能で、

事務所全体として動かなければならない局面が増えてきます。

次第に、「事務所(会社)は生き物のようだ」と感じるようになりました。

転がり始めた雪だるま」のようにあらゆるものを巻き込んで大きくなっていく勢いが感じられました。

 

会社の主役は創業者から社員に切り替わり、社員の力によって会社が動いていくのです。

おそらく、従業員数10名前後を契機として、どの会社も経験する過程なのではないでしょうか。

経営計画には「社員のこと」を記載し、就業規則・人事評価に落とし込む。

経営計画の実行者は社員であり、社長ではありません。

社長だけで全てが回る段階の会社には経営計画は必要ないと思います。むしろそんな暇があったら堅実に実務を行うべきです。

 

社員に計画を実行する動機付けをするためには、福利厚生や待遇について経営計画で触れることが大切です。

物欲に働きかけるだけではありません。

中小企業では、中長期的な見通しが良くない(視界良好とは言えない)ため、モチベーションが上がりきらない社員が少なからずいる可能性があります。

 

例えば、昇給率、例えば賞与の金額、上場企業と中小企業で大きな開きがあります。

次第に中小企業を脱し、待遇を改善していくための道筋が見えているかどうかで、

経営計画の「社員による」実現可能性が大きな差が出るのです。

年間昇給率5%とした場合の3年後に必要な会社の粗利は?

年間昇給率5%(中小企業平均は2%未満だそうです)、決算賞与も出したい、とした場合の必要な粗利を計算しましょう。そして、そのために必要な売上高を計算しましょう。

この計算は比較的シンプルで、税理士に頼めばすぐ回答が出るはずです。

 

その売上高を達成するために、単価を上げるのか、売上数量を増やすのか、顧客開拓をどうするのか、大きな方針を考えるのが社長であるあなたの仕事になるはずです。

もし特に、労働集約型・知識集約型の事業内容であれば、人財を大事にするために高めの給与設定をしていくことはおかしいことではありません。

万人向けではない「経営計画」の議論

上記の議論は決して万人向けではありません。

社長がお1人でずっと仕事を続けられるという会社の形も確かに存在します。

税理士の顧問先としては、むしろそれが多数派でもあります。

 

しかし、もし人を5人以上雇って、これからは会社の力で稼ぐ時期なのではないかと思ったら、

上記の計画策定とそれを従業員に対してオープンにすることが必要な時期なのかもしれません。

 

中小企業と大企業の格差が顕著なことに現れる通り、会社の規模は様々な面で違いをもたらし、

また今までと違う視界が出現する可能性があります。

経営理念はひとの真似でOK

経営理念は仰々しく考える必要はありません。

「従業員を幸福にする、社会貢献する」この程度で十分です。

アップルやマイクロソフトに負けないクリエイティブなポジションを目指すならともかくも、

「人間として基本的な価値観を、企業活動を通じて実現していく」という経営理念が

圧倒的に多数派なのです。

最初から鮮やかなフレーズが思い浮かばなくても良いのです。徐々に改良していく時間があります。

月次決算で社長は何を見たいのか

 

1人社長    → 自分のがんばりの確認、節税(前年対比、3期比較、5期比較

          消費税などの納税見込額

 

中小企業経営者 → 会社が安定して経営していけるか、採用計画・賞与予算の検討資料

        → 粗利をいくら稼げばよいのか

(赤字にしないためには、あるいはあと2人従業員を増やすためには)

 

→ そのためには 悪い例:) 〇〇〇〇を販管費として表示

                 悪い例:)〇〇に比例増減する費用を販管費に表示

                 悪い例:)税込経理

 

売上原価・販管費と、変動費・固定費は別の概念だが、後者に合わせて財務諸表を作った方が見やすい。

 

資金繰の観点    → 借入をたくさんしている会社はいつかは返済をしなければ

ならない。返済はBS借入金の減少で経費にならないのだから、

税引後の利益から返済をしなければならない。

社長が稼がないといけない粗利のハードルがどんどん上がって

しまう。麻薬のようなもの。

 

  数字をごまかしたいお客さんとの付き合いに慣れすぎないこと。

  今期粉飾決算をしたひとが急に、会社の本当の姿を知りたいと言い出すこともある。

  基本的な立ち位置はどこか再確認する。

 

スピードの観点    → うちの事務所の今月の売上、先月の売上、私はわかります。

           → 会計事務所とやり取りして1か月遅れの数字の報告を受ける。

           → お金が貯まっていれば自分で利益が分かる人もいるが

           → 早くできないか、やり取りのストレスを減らせないか、

どこで満足してもらうか。

           

年一決算をやる場合 → 多くの会計事務所は、月次よりも安く受けている。

          → 省略できる部分は?

          → 実は現実とのすり合わせが一番必要

相手の理想とする決算書の作成テクニック

 

相手が喜ぶ仕事をイメージできなければ、ただの無機質な作業で終わり、感謝されない仕事になってしまう。

 

優先順位① 面談メモやメール等で会社の今後の方向性を確認

    ② 会社の状況からうかがい知れる社長のオーダーを予想

 

銀行借入している → 減価償却前利益✖7年分が借入金を上回っているか

           提出書類:決算報告書、科目内訳書、概況書

経理管理ビザ   → 黒字10万円以上、役員報酬300万円以上、従業員1名以上、

家賃60万円以上になっているか。

           提出書類:法定調書、源泉徴収票、決算報告書

過去の利益を参考に → 毎年200万位の黒字にしている、おそらく今年も200万に調整できれば納得してくださる可能性が高い。

          → 毎年赤字にしている、融資等関係ないので税務調査等がはいらないことを優先しているのだと推測できる。

 

決算整理の技術・テクニック  

 

減価償却費で調整する

貸倒引当金、貸倒損失(法定繰入率は暗記してますか?)

提出もれ経費の確認(旅費、携帯代その他個人名義の経費で会社で使用のものなど)

消耗品費で処理する OR 固定資産計上する の選択(30万円未満)

長期前払費用、繰延資産、創立費開業の活用

税込経理・税抜き経理の選択 未払消費税、未払法人税等の計上

未払費用の計上(債務確定基準に注意)

未払人件費の計上(顧客の給与締め日を把握せずに月次決算は出来ない)

固定資産除却処理の検討

締め後売上・仕入れの計上の検討

 

架空人件費、架空仕入れなどとは距離を置くこと。

こちらの口からは絶対に発言しないこと。

 

※「締め後売上 法人税法基本通達」、「債務確定基準 法人税法22条」でGoogle検索

個別論点

現金 → 会社に小口(金庫)が何件あるか、日常の経費は誰がどこから支払っているかをまず確認(ヒアリング)する必要がある。

     どうせ中小企業だから、社長さんが個人の財布から支払っているのだろう、経費精算もしていない、現金管理していないのだろうと考えるのは早計。

     残高を合わせるのが基本。

     「いわれなかったから出してないだけだよ」というケースが非常に多い。業界全体に会計事務所の入力スタッフのコミュニケーション能力はあまり高くない。思い込みで処理をして、というケースが多い。

 

預金 → 通帳からの出金内容について確認する、特にラウンド数字ではない具体的な金額が通帳から引き出されている場合に、これを現金引き出しとして処理する雑なミスが目立つ。

     「こんな額をただ引き出すひとはいないでしょう?」と言われたときに、

     どう言い返しますか?必ず用途を質問しましょう。

     

   → 質問の仕方にも上手い・下手がある。

     90点の質問「会社の口座からATMでお金を引き出すときって誰が、何用に引き出していることが多いのですか?

通帳を入力していたら、何件か、でてきました。 でも、例えばこの111,100円ですが、通帳に印字はなにもないですが、具体的な金額ですし、ATM引き出しではないですよね。これはなんで印字されないんでしょうね?」(電話・チャット・打ち合わせで)

 

     30点の質問「下記の出金の内容を教えてください。 箇条書き」

        (通帳のコピーの添付無し)

     ※あなたが聞かれる立場だったらどうですか?前後の取引や日付を見て、そのころ何をやっていたか思い出すのではないですか?

 

    ※根本的な確認事項を後から質問してくる人、大事なことを長文のメールの

一部に混ぜてくるひとを見て、有能なビジネスマンだと感じますか?

    

 

 

 

売上高 → 収益計上基準は法人税法・所得税法で定められている。消費税法にも定めがあるが、法人税法または所得税法を準用している場合にはこれを認めるとしている。

 

商品の売買・・・納品日基準、出荷日基準、船積日基準、到達日基準(継続適用)

役務の完了・・・役務完了時に計上(例外的に工事進行基準)

 

∴ 売掛金が計上されない会社は0だと思ってください。

  

  請求書が出てこない場合には?

  お客さんが請求書をくれない場合には、決算月の翌月の通帳をもらって、入金から売掛金を推測する方法が最終手段になります。ただし、それをやるためには、通常その会社で売掛金の回収サイト(回収期間)が何日なのか(当然売掛先により違う)を質問・ヒアリングしなければなりません。

→ 根本的な質問ですから、まず最初に確認すべきです。

  入力が終わってから確認していたのではお客さんは有能だと感じてくれません。

 

 

 

 

 

仕入高 → 売り上げに対応する売上原価を計上する。変動費については仕入れ高にあえて表示したほうが見やすいという説もある。

 

∴ ほぼすべての会社で在庫、仕掛品、仕掛工事の計上が必須となる。

  (決算期末ぎりぎりで仕入れた商品、おおむね10日分くらいは税務調査で在庫計上漏れの重点チェック対象)

∴ 在庫表の通貨単位(日本円OR人民元)をよく間違るので注意

 

  仕入れ諸掛りも在庫として計上しなければならない。